株式会社エス・エム・エスキャリア 医療・介護の人材支援

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Community Nurse Company株式会社 矢田 明子 代表(part1)

【スペシャルインタビュー】業界の枠にとらわれず、私らしいおせっかいで人を元気にするということ


スペシャルインタビューコーナー

私たちエス・エム・エスキャリアは、「従事者不足を解消する情報インフラを構築することで質の高い日本の医療介護サービスの継続提供に貢献する」というミッションを掲げています。本コーナーでは、当社代表の長井が自らインタビュアーを務め、当社の価値提供先である事業者と従事者の方々が置かれている世界の理解を深めることで、当社の存在意義を確認していきます。

今回ご紹介するCommunity Nurse Company株式会社(以下CNC)の矢田代表は、看護師としての経験を通じて感じた、業界内で閉じてしまう視野の狭さを課題としてとらえ、コミュニティナースという解決策を考え実行に移されています。

彼女のバイタリティや実体験に基づくリアルな声から、私たちがこの業界に与える影響力とさらなる可能性を見出していきたいと思います。


お話をお聞きした人:Community Nurse Company株式会社 代表 矢田 明子(Akiko Yata)氏

1980年生まれ。島根県出雲市出身。26歳のときの父の死をきっかけに看護師になると決意し、27歳で大学生に。在学中に「コミュニティナース」として活動を開始。看護師免許を取得後、島根大学医学部看護学科に編入し保健師資格を取得。2014年、人材育成を支援する「NPO法人おっちラボ」を立ち上げ、代表理事に就任。2016年5月より「コミュニティナースプロジェクト」でコミュニティナースの育成やコミュニティナース経験のシェアをスタート。2017年4月に「Community Nurse Company株式会社」を設立。著書に『コミュニティナースーまちを元気にする”おせっかい”焼きの看護師』(木楽舎)がある。

 

聞き手:株式会社エス・エム・エスキャリア 代表取締役 長井 利仁

 

 


人とつながりまちを元気にするコミュニティナース

コミュニティナースとは、「地域の人の暮らしの身近な場所で『毎日の嬉しいや楽しい』を一緒につくり、『心と身体の健康と安心』を実現する存在」です。職業や資格ではなく実践のあり方をいい、とくに海外で活用されている「コミュニティナーシング」という言葉がもとになっています。見守り、巡回などさまざまな活動を通じて安心を提供することで地域に関わり、まちを健康にしていきます。


コミュニティナース活動を通じて暮らしのそばから日本を元気にしたい

長井: 矢田さんはCNCを設立して、現在は日本に3万人のコミュニティナース(以下CN)を輩出することに挑戦されているんですね。どのようなきっかけでCNに出会い、今の活動を始められたのでしょうか。

矢田代表(以下敬称略) 私は父の死をきっかけに看護師になりました。がんがかなり進行してから見つかり、悔しさをにじませながら亡くなっていった父を思うと、「病気になる前の元気なうちから、人々の普段の暮らしに溶け込む存在」になれないのかと、考えざるを得ませんでした。そこで大学の授業で出会った「コミュニティナーシング」という言葉に反応したわけです。CNの存在価値を地域の人々が理解することで、健康や暮らしに関する不安が少しずつ解消され、まち全体が健康になっていくのでは、と考えました。

長井: CN って、新しい社会システムをデザインしているような、面白い取り組みだなと思いました。看護師のような専門職の方々だけで取り組んでいるのではなく、資格を持たない人もCNとして活動をされているんですよね。

商店街の魚屋さんにとけこむコミュニティナース

矢田: そうなんです。最初は看護師をはじめとした医療専門職の人たちが多く活動していましたが、業界を問わず一般市民の方々を巻き込んだ方が、社会を大きく変えられる可能性があると感じています。一般市民の方がCN化していく動きの例として、雲南市では郵便局員さんとの取り組みが始まっています。郵便局を使うまちの方々が、元気になったり、安心したりするような声がけ・見守り・おせっかいをしようとCNや地域の皆さんが共に検討しています。

1つの事例として、一日に何度も窓口に来られるおじいさんがいて、認知症かもしれないと感じていても、局員さんは声をかけられなかった。しかし、CNの視点で「業務以外のことを声がけして行動して良い」となると、一緒に困りごとを解決する方法を考え、解決できなければ、まちのナースと連携する動きを考えるようになります。医療的な観点で直接、早期発見をするというより、周囲の関わり方や環境がおじいさんに対しておせっかいになる、そしておじいさんは「困っていることはないか」と声をかけてもらえるようになる。その関わりが喜ばれるものなのか、ご本人が求めているのか、ということは関係の築き方や対話によって調整が必要ではありますが、CNの場合“おせっかい”がキーワードです。

  • 暮らしの身近なところで関係をつくっているか
  • 関わりの中で私たちの方から気づけるかどうか
  • 気づきから行動に移しているかどうか

この3つがCN活動をしていく上で大切にしているポイントです。

市民自身が困っている、と声をあげなくても、「どうされましたか?」と声をかける“おせっかい”から、その方の主観的幸福度が上がること。さらには、暮らしの中のおせっかいによって、周りの方々にも社会的役割が生まれていくことを目指しています。

長井: 地域住民に寄り添った活動ですね。さらに“おせっかい”というキーワードに、人の優しさを感じます。

矢田: ありがとうございます。新しい取り組みなのでたくさんの壁がありますが、今後活動を広げていくためには、

  • CNに挑戦する本人たちが、CNとして収益を得ていくこと
  • 周囲にCNのような新しい働き方への理解を示してもらうこと

この2つを実現していくことが重要だと考えています。CNCでは、「地域住民に寄り添うCN活動をする人を、日本全国で3万人に増やすこと」をビジョンとしています。3万人というのは、私が看護師の資格取得のための学費を貯めようとヤクルトレディとして働いた経験があり、全国に3万人いるヤクルトレディの数からとりました(笑)。CNがヤクルトレディのように皆が知る存在になったら、社会が変わると思っています。


軸にしているのは、エンドユーザーのためになっているか

長井: CNの活動を行う上で、矢田さんが軸にしているものって何でしょうか?

矢田: 「医療業界のため、その業界で働く自分のためではなく、エンドユーザーのためのサービスになっているか?」ということですね。エンドユーザーである市民の声が聞こえないと、一方的に健康やケア領域の正しいことを伝えようとしてしまいますが、聞き入れてもらえないこともあります。でも先に信頼関係をつくっておくと、市民であるまちのおじさんたちが「明ちゃん(矢田代表)が言うなら」と、血糖値の話、健康指導みたいなことを聞いてくれるようになったりします。ウェルビーイングを決めるのは業界ではなく、エンドユーザーだからこそ、今後こういうケア領域を、いかに市民に広げて、市民のものにしていけるかが大切だと思います。

※ウェルビーイング=満足のいく状態、幸福などを意味する。個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態をさす。

長井: なるほど。その思いの背景に、何か課題に感じたことがあったのでしょうか。

自らコミュニティナース養成講座で教える矢田代表

矢田: はい。例えば業界の人同士で話をすると、どうしても「在宅ケアが…」のように、制度や政策の話になることが多いんです。市民側が「これを求めている」って声を上げれば上げるほど、業界はそれに合わせざるを得なくなると思うのですが、今はまだ市民の声が小さくて、業界の声が大きすぎると思っています。それで、私は完全に市民サイドからアプローチする戦法を取っていますね。

長井: 我々は業界で働く人へのアプローチが主なので、とても興味深いですね。


キャリアや可能性を探る従事者に私たちができること

長井: ここからは医療介護業界について伺っていきたいのですが、矢田さんには医療介護従事者はどのように見えていますか?

矢田: 従事者たちを知れば知るほど、彼らのポテンシャルを感じています。ただ、人の生死に関わる世界なのでエビデンスがないと話せないことが多いのもありますが、正直不器用だなと思って。でもそれが彼らなりの誠実さだし、良くも悪くもピュアだと感じました。

そして人に優しくすることが善だという価値観が強いと思います。だからこそ、それができなくなると、看護師をやっていて意味があるんだろうかと、すごくつらくなるんですよね。私のCN活動を新聞などのメディアで見て興味を持った人が、CNの活動拠点である、あの行きにくい島根に年間200人も視察にやってきました。彼らは自分たちのキャリア・可能性を探って、訪ねてきてくれたのです。

長井: たしかに島根は行きにくい(笑)。そこで働く人の課題に気づいたんですね。

矢田: はい。今、仕事をお金だけで選ばない世代が増えています。働くことの満足度とか、自分が成長できているかなどが重視されてきています。私の運営している訪問看護ステーションは、看護師の平均年齢が27歳と若いのですが、より若い人の方が圧倒的にそういう選び方をしています。ただ、希望を叶えられる選択肢が世の中に存在し始めていることを知らず、病院しか選択肢がないと思っている人も多いのだと感じます。選択肢を知れば、他を選びたいという若い人が増えていくのではないかと思いますね。

長井: 我々は情報インフラとして、多様な働き方の可能性を世の中に知らしめる役割もあると思っています。

矢田: 働く人に情報という名の武器を持たせることも大事だと思います。情報として知っているか、どのような体験をしてきたかで、本人の働き方に対する考え方が全く変わってくると思っています。あらかじめ情報として知らせておく、何かあったときの選択肢を教えておくことで、結果的に働き手自身が強くなるのではないでしょうか。

長井: 仕事探しをお手伝いする我々の立場からすると、情報という名の武器を提供し、さらにその質を上げていくことで、より業界に貢献できる可能性が広がっていくと感じます。企業理念にも掲げていますが、我々はやはり医療介護業界の情報インフラとなり、従事者、そして事業者を導いていく存在でありたいです。


インタビューを終えて(代表長井より)

最後までお読みいただきありがとうございました。今回の対談を終えて、矢田代表はまさに「感じた課題を行動に移し、その実体験に基づき、業界の仕組みにとらわれず新しい切り口で体現している人」だと感じました。お話を聞き、彼女の言っていた業界特有の閉そく感に対する課題認識、そして視野を広げるための情報の価値について大きな学びがありました。
私たちの企業理念の実現は、お客様や市場に愛されていなければ当然到達できないと思います。そのために、私たちがお客様を思い、一部の組織・人ではなく全員がそれに向かってサービス品質をお約束していくことが必要になります。その意味で「情報を正しく伝えてお客様を導いていくことの重要性」は、私たち全員にとって示唆に富んだ話題であったかと思います。